食細胞遺伝子の分子病理学的解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470066
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 山本 俊輔 大分医科大学, 医学部, 教授 (90040188)
• 研究分担者: 松浦 恵子 大分医科大学, 医学部, 助手 (00291542)
• キーワード: CD14 / CD156 / オステオポンチン / トランスジェニック / エンドトキシン / メタロプロテアーゼ / AD56 / ADAM

研究概要

CD14について:1.CD14トランスジェニックマウス(TM)の解析:CD14のTMではマウス(m)CD14の模型と遊離形のTM(M14MおよびM14S)を作製し、C57BL/6Nマウス(BL/6N)へのバッククロスを10代行いBL/6N形質を持つTMを作製し、homozygote化を開始した。1).組織におけるCD14発現状態:肝臓の他、小腸に強く発現することを観察した。また、M14Mの腹腔細胞でB220陽性細胞中に強くCD14を発現する集団が存在することを見出した。2).LPS対する致死性反応:P.acnes死菌腹腔投与後少量のLPSを投与するモデルで起こる肝細胞懐死がM14Mで回避されるが致死は回避しえないことを明らかにし、現在その原因を解析中である。2).mCD14N末端部アミノ酸71個をコードするTMの作出:N末端側71個のアミノ酸(N71)領域内にLPS結合部が存在することが予測されており、α1抗トリプシンプロモーター(α1ATP)-N71コードDNA TMを作出した。3).種々の菌成分に対する各TMの反応性:グラム陰性菌以外のP.acnesやBCG各TMのCD14およびCKやiNOSの肝およびMφにおける発現を確認した2.rmCD14の作製:リコンビナント(r)mCD14(r71N)をE.coli、CHOおよび昆虫系細胞で得た。3.LPSおよびCKによるsmCD14の遊離動態および意義に関する実験:種々の濃度のLPS刺激によるsmCD14の遊離を経時的に観察し,LPS刺激に伴うsmCD14は初期にinhibitor、後期には血管傷害因子として働くことを確認した。4.In vivoに置けるLPSおよびCKによるMφ系細胞のCD14およびCK発現:CD14,TNFα,IL-1β,IL-6,IL-10,IL-12の種々のMφ系細胞における発現を検討中である。
CD156について:1.mCD156およびヒト(h)CD156蛋白の分離と利用:E.coli系ではすでにMT、DIドメインおよび両者を含むr蛋白を作製した。r蛋白を用いてmAbを作製し、CD156の組織発現を検索した。r蛋白で低レベルのmetalloproteaseおよびdisintegrin活性を検出したが、より明確に活性を検討するために酵母の発現系での発現を試みている。2.mCD156TMの樹立と解析:すでにα1ATP-mCD156TMのBL/6Nへのバッククロスを行い7Nを得ている、さらに10Nと10Nでのホモマウスの樹立をめざす。可溶性mDAM8の血中増加を観察した。mCD156を肝臓および腎臓に強く発現することを確認した。また、oxazoloneによる接触皮膚炎における好中球浸潤がnon-TMに比べより強く起こること、一方、カゼイン刺激炎では好中球の反応が抑制され、両者の違いを解析中である。2.新しいADAMファミリー蛋白AD56の解析:1)AD56cDNAの塩基配列解読:マウスAD56のcDNAを分離し全塩基配列を決定した。3.AD56のゲノム遺伝子の解読:約70%のAD56遺伝子構造を明らかにした。4.AD56蛋白の分離.MTP、DIドメインのs種々の細胞膜外部のr蛋白を酵母系ベクターで作製した。6)抗AD56蛋白抗体の作製と利用:AD56のr蛋白を用いてウサギ抗体を作成した。
OPNについて:ヒトOPNのMφにおける特異的発現に関与するシス領域GAAAACを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] 山本俊輔他: "LPS臓器障害とマクロファージ" 病理と臨床. (印刷中).
• [文献書誌] Onozuka,K.他: "Participation of CD14 in the phagocytosis of smooth-type Salmonells" Microbiol.Immunol.41(10). 765-772 (1997)
• [文献書誌] Kataoka,M.他: "Structure of the murine CD156 gene,characterization of its promoter" J.Biol.Chem.272(29). 18209-18215 (1997)
• [文献書誌] Yoshiyama,K.他: "CD156(human ADAM8):expression,primary amino acid sequence,and" Genomics. 41(1). 56-62 (1997)
• [文献書誌] Takai,N.他: "Primary structure of rat CD14 and characteristics of rat CD14,cytokine" I.Leuko.Biol.61(6). 736-744 (1997)
• [文献書誌] Kirikae,T.他: "Rhodobacter spheroides diphosphorly lipid A inhibits interleukin-6" J.Endotoxin Res.4(2). 115-122 (1997)
• [文献書誌] Shinji,H.他: "Lipopolysaccharide-inducel biphasic inositol 1,4,5-triphosphate response" J.Immunol.158(2). 1370-1376 (1997)
• [文献書誌] 樋口安典他: "CD14トランスジェニックマウス" 臨床免疫. 29(11). 1345-1350 (1997)
• [文献書誌] 山本俊輔他: "CDD156(ADAM8)の構造、機能およびファミリー" Molecular Medicine34(臨時増刊号)免疫1997-98. 148-162 (1997)
• [文献書誌] Haziot,A.他: "Resistance to endotoxin shock and reduced dissemination of Gram-negative" Immunity. 4(4). 407-414 (1996)
• [文献書誌] 山本俊輔: "マクロファージの分化とオステオポンチン遺伝子" The Bone. 10(1). 123-133 (1996)
• [文献書誌] 山本俊輔他: "マクロファージ細胞表面上の分化抗原とその意義" 臨床免疫. 28(1). 37-48 (1996)
• [文献書誌] 樋口安典他: "オステオポンチン" 現代化学. 増刊29. 218-224 (1996)
• [文献書誌] 片岡晶志他: "エンドトキシン研究の動物モデル-エンドトキシン感受性亢進マウス." 菜根出版(印刷中), (1998)
• [文献書誌] Yammoto,S.他: "Roles of CD14 in LPS signaling and scavenging:studies using CD14-" Weiley-Liss(印刷中), (1998)
• [文献書誌] Higuchi他: "MS2(ADAM8)a myelomonocytic cell surface antigen:expression," Oxford Univ.Press(in press), (1998)
• [文献書誌] Takai,N.他: "Structure of rat CD14,and expression of rat CD14 and cytokines" Oxford Univ.Press(in press), (1998)
• [文献書誌] Kataoka,M他: "Generation and analysis of CD14-transgenic mice" Oxford Univ. Press(in press), (1998)