研究概要 |
本年度の研究は,(1)老人保健法に基づく基本健診受診者の受療行動のフォローアップを行い,健診結果とその後の受療行動の関連を解析する,(2)母子保健法に基づく健診事業については,過去の健診結果報告票と,健診前後の医療機関受療状況を調べ,両者の関連を解析する,である. (1)基本健診受診者の受療行動 神奈川県愛川町及び三重県紀宝町において,基本健診受診後「要医療」と判定された者を対象に実施した予備調査の結果,基本健診受診前3ヶ月間に医療機関を受診した者は,受診しなかった者よりも基本健診で「要医療」判定後に受診する傾向があることがわかった.この結果は,基本健診の受療行動に,他の受診状況が反映している可能性を示唆するが,新規に要医療と判定された場合にその後の受療行動にむすびつきにくいことも考えられよう.また,愛川町において,基本健診を実施した病院別に,対象者の要医療認識度および要医療通知後の受診の有無を調べたところ,主要3病院の要医療の認識度はいずれも60%前後であったが,要医療通知後の受診率は76〜91%と病院によって異なっていた.また,同地域で健診結果と国保レセプト情報より受療行動を追跡調査したところ,基本健診の対象疾患外である軽症疾患(上気道炎,腰痛等)のその後の入・通院率は,基本健診で「異常あり」の者が「異常なし」の者よりも高いことがわかり,健診受診がその後の受療行動を高めた可能性が示されたので,この結果を論文にまとめ報告した. 今後は,「要医療」と判定された受診者に対する病院側の捉え方・以後の診療体制も考慮して,患者側,医療提供側の双方の調査,分析が必要と思われた. (2)母子保健法に基づく健診事業 神奈川県愛川町が掌握している母子管理票1,218件,及び,該当者の健診の前後に渡る期間の国保レセプトを入手し,受療行動に関する項目の検討を行っている.また,母子管理票のデータと国保レセプト情報のコンピュータへの入力を開始するとともに,両者データのリンケージによるデータベース化を進めている.
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