本研究は、PETやSPECTによるヒトの脳内ドパミンシナプス機能の定量的測定法の確立をめざして、用いる標識リガンドの特性を考慮した数学モデルの設定と、これらのモデルに基づく解析法の開発、さらに臨床的に利用できる簡便な解析法を考案し、その妥当性について検討するものである。本年度は、ヒト脳のSPECTデータによるドーパミン受容体の定量的解析法の開発研究と、ラット脳の新鮮切片を用いた基礎的研究を行った。 1. SPECTによる受容体機能の定量的解析 ドパミンD2受容体に特異的な結合を示すヨードベンゾフラン(IBF)のヨウ素123標識リガンドを用いるヒト脳の動態SPECTデータの解析を継続して行った。特に、動脈血濃度の測定上問題となる血液中の代謝物の分析と、正常脳の解析結果から臨床的に利用きる簡便定量法の検討を行った。 2. ラット新鮮脳スライスによる基礎的検討 昨年度の研究で、ラット脳の新鮮切片を用いて標識薬剤の動態をイメージングプレートにより測定するダイナミックポジトロンオートラジオグラフィ法を確立したが、今年度はその基礎的な特性を把握するために、低酸素や乳酸などの負荷を与えてグルコース代謝を指標とする本測定法の妥当性について確認した。また神経受容体機能測定への応用を開始し、薬剤による受容体機能の変化を検討した。
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