研究課題
基盤研究(B)
【実験1:幼若ラット脊髄損傷モデルにおける機能回復の回析】生後2週齢のラット胸髄を完全切断し、機能の回復と軸索再生の有無を行動学的、電気生理学的、組織学的に検討した。8週齢時までに歩行可能なまでに機能が回復したものが認められたが、その歩容は正常とは異なり、また皮質脊髄路(錐体路)の再生がなくとも歩行は可能であった。今後は中期・長期の成績や、回復した群における他の索路の再生の有無等について検討を重ねる予定である。【実験2:成熟ラット脊髄損傷モデルの作成】生後2ヶ月齢以上の成熟ラットにおける脊髄損傷モデルとして、胸椎椎弓切除、胸髄完全切断、脊髄・硬膜の軟組織の固定、胸椎後方要素の硬組織の伸展位固定の4つのステップからなる手術手技を計画し、実験系として確立すべく一次実験を進めている。【実験3:大脳皮質から脊髄へ投射するニューロンの誘引因子の検討】大脳皮質から脊髄へ投射するニューロンは、出生から3週齢時までの間に皮質脊髄路を下行し、脊髄灰白質へ入り前角細胞とシナプスを形成する。この際脊髄灰白質から、下行してきた軸索を誘引するシグナルが発現している可能性が示唆されている。生後1週齢未満の幼若ラットの大脳皮質と脊髄灰白質を共培養したところ、大脳から出たニューロンの軸索は灰白質へと誘導された。今後は、軸索が投射した先の灰白質の細胞を特異的マーカーなどを用いて同定し、さらに胎性期のラットの脊髄を標的として共培養し、かかるシグナルの発現時期や本態について検討する予定である。