研究概要 |
心停止モデル犬に対する軽度低体温ECLHAの脳蘇生効果実証 方法と結果:心停止モデル作成法自体が蘇生結果に影響するから,本研究では超短時間性のチアミラルと吸入麻酔薬で雑種成犬を麻酔し,心停止前15分間は完全に麻酔薬投与を中止して麻酔薬の脳保護効果を可能な限り除いた。心停止前の100%酸素吸入を避け空気による人工呼吸を実施し,37〜38℃の肺動脈血温度下でヘパリン投与後,心室細動誘発にて15分間の心停止モデルを作成し3群にわけた。1群(コントロール群,3匹)は閉胸式心マッサージ法,2群は常温ECLHA(2匹),3群では,軽度低体温(肺動脈血温度を33℃に維持)併用ECLHA(2匹)を実施した。コントロール群では,心マッサージ中に肝臓損傷を生じ大出血のため全て蘇生不能であった。ヘパリンの前投与なしで,同様のモデルにて蘇生を試みたが,やはり心筋梗塞を生じて蘇生不能であった。2群では心マッサージを実施することなく直ちに常温のECLHAで蘇生を実施した。自己心拍は直ぐ回復したけれども,数時間後に心筋梗塞を生じ蘇生不能であった。3群では,蘇生開始と同時に約20時間軽度低体温に維持し6時間かけて復温した。低体温導入がら復温の間はECLHAで呼吸と循環を維持した。2例とも正常に回復し,72時間後のneurological deficitは19〜3%であり,十分な脳蘇生効果を認めた。 考案とまとめ:当初の計画では10分間の心停止に対する蘇生研究であった。しかし,比較的容易に蘇生できることから15分間の心停止に変更した。5分間の心停止の延長は,蘇生を非常に困難にし,本研究にとっては最適のモデルとなった。本研究の結果はECLHAによる迅速な軽度低体温法のみが心・肺・脳の蘇生に有効であることを示唆した。今後例数を増やし,低体温併用長期ECLHAの蘇生効果を明らかにしたい。
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