研究概要 |
内毒素リポ多糖体(LPS)やその活性中心であるLipidAなどのbacterial componentが抗腫瘍効果を発揮するには、マクロファージの関与が重要であることを示唆する報告が多い。 本年度における研究では、まずマクロファージの産生するcytokine(IL-1 β,IL-1ra,IL-6,IL-8,GM-CSF,TNFαおよびIFN-γ)とマクロファージのcytotoxicityについて検討した。 Meth A fibrosarcoma(mouse)に対するマウス脾臓マクロファージのcytostaticおよびcytolytic activityを調べると、Porphyromonas gingivalis381 Lipid A(投与量0.5〜50μg/ml/mouse)は対照群に比し、高いcytostatic activity(30〜65%)を示した(p<0.01)。これは、P.gingivalis381のLPSやEscherich0ia coli O55:B5のLPSと同等の活性であった。一方、cytolytic activityは対照群に比して有意(p<0.05)に高まるが、前2者のLPSに比較するとその活性はやや弱い傾向があった。次に、マクロファージに関連の深いcytokine類の産生能を調べた。すなわち、正常人の末梢血液より、monocyteあるいはmononuclear cellを分離し、in vivoでLipidA(50 μ g/ml)を加えて培養し、その上清中のcytokine量をELISAにて測定した。その結果、上記のcytokineすべてについて、対照群に比し有意(p<0.01)の産生増強が認められた。P.gingivalis381のLPSと比較すると、P.gingivalis381LipidAはGM-CSFの産生は促進するが、IFN-γの産生は低かった。また、E.coliO55:B5のLPSと比較すると、同じLipidAはIL-1β、TNF-αおよびIL-6の産生性は低く、IL-1raのそれは促進した。 以上の結果より、P.gingivalis381 LipidAはLPS本来のもつ生体にとって有害な急性炎症を抑制しながら、マクロファージを活性化し、抗腫瘍免疫の誘導に有用な作用を持つことが示唆される。今後は、他のeffector cellに対する作用を調べるとともに、マウスの系で転移の治療モデルを用いて、その効果を検討することを計画している。
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