研究概要 |
目的:歯根膜は咀嚼に伴う咬合力や、矯正力などのメカニカルストレスに対して適応し、その恒常性を保っている。この歯根膜の適応反応には、様々な局所因子の関与が示唆されている。本研究は、最近骨におけるメカニカルストレスのメディエーターとして注目されている一酸化窒素(NO)に着目し、メカニカルストレスの負荷が培養歯根膜細胞の一酸化窒素産生に及ぼす影響を調べることを主な目的としている。今年度は、メカニカルストレスがヒト歯根膜細胞によるNOおよびプロスタグランジン(PGE_2)の産生とこれらの合成酵素(NOS,COX)の遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。 方法:ヒト小臼歯より採取した歯根膜を10%FBS添加αMEM培地にて培養後、周期的伸展力を負荷し、経時的に培養液を採取するとともに、RNAをを抽出し、RT-PCR法によりcNOS,iNOS,COX-1,COX-2のmRNA発現レベルを調べた。培養液中のNO量はHPLC-グリース法により、PGE2産生量はEIA法により測定した。 結果:1.伸展力の負荷により、急速で一過性のNO産生が認められた。2.cNOS遺伝子発現レベルは、伸展力負荷後経時的に減少した。3.PGE_2産生は経時的に増加した。4.伸展力負荷後、COX-2遺伝子発現レベルは上昇したが、COX-1遺伝子発現に変化は認められなかった。 結論:メカニカルストレスを受けた歯根膜の適応反応には、NOおよびPGE_2がこれらの合成酵素の遺伝子発現を介して関わっている可能性がある。
|