本研究は、低圧で行われてきたエッチング技術を、我々が開発してきた高密度活性原子源を用いて大気圧で行い、(1)大量処理に有利な大気圧での除染の可能性を調べるとともに、(2)そこで起こる活性原子による基礎過程を明らかにして、今後の放射性物質除染実験とスケールアップに必要な知見を得ることを目的として行った。 平成10年度は、9年度の実験で明らかになった実験装置の改良とそれによって、基板温度と基板への活性原子フラックスを一定にすることにより最適条件を探るとともに、フッ素原子の測定を通じて反応機構を明らかにし、実用化の可能性を調べた。以下にその内容と得られた成果を箇条書きにする。 (1) マイクロ波加熱プラズマトーチを改良し、フッ素、4フッ化炭素の放電に最適な電極配位を持ち、動作が安定なトーチを作製した。これによって再現性のある除染実験が可能となった。 (2) ステンレススチール表面に、被除染物質の模擬物質(コバルトなど)を酸化物の形態で焼き付け、前述の活性原子源にさらして除去効果を確かめた。これによって、2〜3分程度の照射で、95%以上のコバルト酸化物を除去できることがわかった。 (3) 排ガス組成を調べ、除去効果と活性原子密度分布との関係から反応機構について考察をおこなった。系の熱力学的平衡計算を行い、各成分の組成、条件と、除去効果の関係を明らかにした。これらの実験により、実プロセスとしてのフィージビリティが明らかになるとともに、実用化への研究課題が摘出された。
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