研究概要 |
ラットホスホリパーゼD(PLD)遺伝子(rPLD1a,1b,D2)をクローニングし、遺伝子座を決定した。PLDの機能解析を行う手がかりを得るため、各種細胞刺激時のPLD活性とmRNA発現の変化を調べた。ラット好塩基球性白血病RBL細胞では、3種のPLDmRNAが発現しているが、ARFやCDC42などの低分子量G蛋白質依存性PLD1活性がセロトニン分泌と関連性が強いことを示した。ヒト前骨髄性白血病HL60細胞ではRho,PKC依存性PLD1が主に発現しており、好中球様細胞への分化誘導過程ではPLD1,PLD2mRNAの上昇とRho,PKCによる活性上昇を示し、PLD活性が転写レベルで調節を受けている可能性を示した。また、C6グリオーマー細胞では2種類のPLDmRNAが発現しており、神経系突起伸長を伴う分化誘導過程でPLD活性の上昇とPLD1mRNAの増加が見られた。一方、C6細胞やRBL細胞のセラミドによるアポートーシス誘導過程ではPLD1mRNAレベルとPLD活性の顕著な減少がみられた。これに対して、オレイン酸で活性化される脂肪酸型PLDを主に発現しているTリンパ球Jurkat細胞では、アクチノマイシンDによるアポトーシス誘導時に、PLD活性は逆に上昇した。また、ラット褐色細胞腫PC12には脂肪酸型PLD活性が高く、低酸素によるアポトーシス誘導時には、スフィンゴミエリナーゼの活性化によるセラミド産生が関与しており、PLD活性の上昇が観察された。PC細胞ではH_2O_2刺激による強いPLD活性化に、Ca^<2+>依存性チロシンキナーゼの関与が示唆された。また、肝細胞核にARF型と脂肪酸型PLDが存在し、再生肝の核ではARF型PLDのみが一過性の上昇を示した。以上の結果より、PLDアイソフォームは異なる細胞機能調節に関与している可能性が示唆された。
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