本研究では、集光型宇宙太陽発電衛星に必要なサンドイッチ型発電・送電モジュールの開発が目的である。本年度は高効率増幅器とアンテナ素子を重点的に開発した。 マイクロ波無線送電には、増幅器の高効率化が不可欠である。この増幅器の効率の向上のため、方形電圧波形によるF級動作を試みた。FETでの消費電力を抑さえたF級動作は理論効率100%である。しかしF級は非常に高いレベルでの回路設計・製作が必要となるため、その実現は困難でほとんど報告例がない。まずは高出力GaAsFETを用いてA級動作で電力増幅器の開発を行ない、2.45GHzにおいて、FETのドレイン効率43%を得た。このA級電力増幅器をF級へと発展させることで、その効率の上昇を図った。F級動作では、全次数の高調波のインピーダンス制御が必要であるが、今回はスタブにより有限の次数の高調波のインピーダンスを制御することでその変化を観測した。その結果、偶数次高調波と第三次高調波を制御した増幅器は、A級よりも全体的に5%の上昇がみられた。 送電アンテナとしては、小型・薄型・軽量で基板上で製作可能、かつ放熱性が良いという条件からスロットアンテナを選択した。このスロットアンテナの数値解析法として有限要素法とモーメント法による両手法と、実際にアンテナを試作して得られた値との比較・検討を行った。有限要素法にはEMASを、モーメント法にはEnsembleを用いてアンテナの解析を行った。アンテナの反射特性と放射パターンにおいても、モーメント法解析によるシミュレーション結果と実験値を比較し、有効な結果が確認できた。また、最適なスロットアンテナの設計を行ったところVSWRが1.2という放射効率の良いモデルが設計できた。
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