本研究では、新しい集光型宇宙太陽発電衛星の宇宙工学の観点からのシステム検討と、実現に不可欠なサンドイッチ型発送電モジュールの開発が本研究の目的であった。システム検討としては軌道計算から始め、もっとも難問であった排熱の方法を検討した。その解決策として反射板による太陽光のスペクトル選択を提案し、10倍の集光が可能なことを示した。サンドイッチ型発送電モジュールの開発では、初年度に単素子アンテナの基礎開発、次年度にアクティブフェイズドアレイアンテナヘと発展させ、最終年度にはレトロディレクティブ方式のデモンストレーションに成功した。 宇宙から地上へ無線送電を行うためには高精度なビーム制御が要求され、レトロディレクティブ方式が最適と考えられている。本研究ではレトロディレクティブ方式のための移相器を数種類開発した。回転型、デジタル型、アナログ型、ハイブリッド型移相器である。デジタル移相器では位相精度や損失の点で改良し、アナログ移相器ではスタブの活用により位相を180°変化させることができた。回転型移相器は電気素子を使用しない点や簡単な構造など新しい移相器で、Active Phased Arrayの位相制御に有効性を示した。ハイブリッド型は、デジタル型とアナログ型の長所を生かした移相器で、容易に7bitsもの精度を実現できることを示した。 4台のサブアレイからなるレトロディレクティブ方式を開発し、約4mの距離のビーム制御に成功した。このデモンストレーションでは送電波はレトロディレクティブ方式により制御され、レクテナに取り付けられたLEDの点灯により受電を確認した。このデモンストレーションの成功により、本研究で開発したレトロディレクティブ方式の有効性を実証した。さらにサンドイッチ型宇宙太陽発電衛星の有効性を実証できたと考える。
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