研究課題/領域番号 |
09557026
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研究機関 | 国立国際医療センター |
研究代表者 |
山本 達男 国立国際医療センター研究所, 感染・熱帯病研究部, 部長 (80095843)
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研究分担者 |
脇阪 紀子 国立国際衣料センター研究所究所, 感染・熱帯病研究部, 流動研究員
張 慧敏 国立国際衣料センター研究所究所, 感染・熱帯病研究部, 流動研究員
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / O157 / ^<60>Co照射殺菌 / 経口ワクチン開発 / ^<60>Co照射ワクチン開発 |
研究概要 |
1996年に、わが国で患者数が9千名以上といった世界最大規模の腸管出血性大腸菌感染症の流行が発生した。全国各地がまさに当該感染症に席巻されてしまうという異常な事態となった。本研究の骨子は、食材中の腸管出血性大腸菌の新しい殺菌法を開発するとともに、新しいタイプの経口型予防ワクチンを開発し、深刻な腸管出血性大腸菌の流行を封じ込めることにある。^<60>Co照射による腸管出血性大腸菌の殺菌:O157を含む各種血清型の腸管出血性大腸菌(10^<10>CFU/ml)は2×10^5rad(2×10^3Gy)以上の照射によって完全に殺菌された。なお、照射線量が少ない場合には、1×10^4rad照射で生菌数が約1/10に、3×10^4rad照射で生菌数が約1/1000に、1×10^5rad照射で生菌数が<1/10^6に減少した。この様な^<60>Co照射による腸管出血性大腸菌の殺菌は、巨大分子である染色体DNAの破壊によるものであった。 ^<60>Co照射による経口型腸管出血性大腸菌ワクチンの開発:ヒトの腸管粘膜には分泌型IgAを主体とした、血中の免疫系とは異なった強力な免疫機構が備わっている。経口的に投与された抗原は、まず、小腸粘膜に存在するパイエル板のM細胞(抗原摂取細胞)に取り込まれ、下方に位置する"ポケット"リンパ細胞等に伝達されて抗原提示がなされる。開発しようとするワクチンは、鞭毛を回転させて動きまわり、粘着因子を使ってM細胞に粘着する"機能をもった死菌体"(新世代の不活化ワクチン)で、上記の^<60>Co照射によって作製する。2×10^5rad以上の照射によって殺菌された腸管出血性大腸菌は、未処理菌の50%以上のレベルで、運動性を保持していた。さらに、^<60>Co照射死菌体("動き、くっつく死菌体")が、生菌とは違って、腸管の上皮細胞内に高率に取り込まれていく特性をもつことも分かった。効率よく抗原提示される可能性が高い。現在、実用化に向けて動物実験を計画中である。
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