研究概要 |
[試験溶液の調整] 年次毎にまとめた保存大気粉塵からDCMによる有機物質の抽出を行った。これらの粉塵抽出試料を用いて、以下に示す化学分析・変異原性測定の予備試験或いは本試験を行った。 [ニトロアレーン・PAHの分折] ニトロアレーンと比べてPAH濃度の長期変動には著しい減少傾向がみられた。 [変異原性試験] ・Ames-test TA98,TA100株いずれについても間接変異原性と比べて直接変異原性の長期変動の減少傾向は小さく、特にTA98株での直接変異原性には測定期間を通して減少傾向は殆どみられなかった。 ・マウスリンパ細胞試験 粉塵抽出物はL3178Y細胞に対して濃度依存的に毒性を発現した。同細胞を用いたMLA試験の結果では、突然変異頻度は代謝活性化の有無にかかわらず濃度依存的に増加し、MLA試験が粉塵抽出物中の突然変異や染色体異常を誘発する物質の検出に極めて有効であることがわかった。 ・in vitro小核試験 昨年度に引き続き、CHL細胞を用いて粉塵抽出物について細胞増殖抑制試験および変異原性試験の検討を行った。その結果、連続処理法および短時間処理法の双方において濃度依存的に小核の誘発が顕著に認められたことから、本法により大気汚染物質の変異原性評価が可能であることが明らかとなった。 [欠損株の開発] エームス試験菌株のTA1535,TAl538株のeat遺伝子を特異的に破壊し、これらにpKMl01を導入したTA100,TA98株のアセチル転移酵素欠損株(YG7126,YG7130株)を作成した。そして、これらの菌株は、目的とする遺伝子以外に突然変異が入っている危険性が低いこと、および変異原性試験によるニトロアレーンの検出において有効であることを明らかにした。
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