研究概要 |
今年度は、研究代表者および研究分担者のほかに研究協力者三名,計六名が各自のテーマについて研究発表を行った。各自の研究発表は:沼田英子「15世紀イギリス写本におけるページ・デザインと物語表現」、田中久美子「写本の制作過程-『モーガン写本358番』を中心に-」、守山実花「13世紀フランスにおける旧約主題のステンド・グラス-シャルトル大聖堂およびブールジュ大聖堂の『ヨセフ物語』をめぐって」、荒木成子「ディルク・バウツ学会(1998年11月26日〜28日、ルーヴァンにて開催)についての報告」である。各自の報告をもとに、視覚芸術における「叙述性」という観点を軸として問題点を浮き彫りにしてディスカッションを行った。その結果、地域や美術ジャンルにおける相互関連や特性も明らかになった。また、6月には、清泉女子大学に所蔵されている『クロイの時祷書』(16世紀初頭)および『トリノ=ミラノ時祷書』(14世紀末〜15世紀初頭)のファクシミリ版の見学を行った。 さらに、研究と平行して、各自、研究に必要な写真資料、文献資料の収集を積極的に行い、その整理・分析を行った。特に、写本、版画など日本ではまだ出版されていない貴重な作品のスライド、マイクロ・フィルムを充実させた。 最終年度にあたる11年度は、昨年度と同様に研究連絡会議を行い、各自の研究テーマに引きつけて本研究会の課題である「叙述性」の問題を更に掘り下げて考察する。同時に、研究成果を論文にまとめて報告書を作成する予定である。
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