研究概要 |
今年度は、新たにロマネスク美術を専門にする高野禎子が研究分担者として加わり、研究代表者および研究分担者のほかに研究協力者4名、計7名によって、成果報告書の作成を念頭に置いて研究発表及びディスカッションを行った。研究発表の内容は;保井亜弓「マイスターE.Sとタピスリー-失われた初期ネーデルランド絵画の一図像をめぐって-」、堤委子「Biblia pauperumについて」、高野禎子「ピーターバラ大聖堂建築にみる特異性-R.グロッステストと同時代の芸術」、守山実花「中世美術からみたジセル」である。また、丸善書店で開催された「貴重古書展」で中世写本の鑑賞を行った。 研究発表を通じて、ネーデルランド、フランス、ドイツ、イギリスの4つに領域を分けて、絵画、版画、写本画、工芸、建築におよぶ各自の分担領域を「叙述性」という観点から討議した結果,各人の問題点が浮き彫りになり、地域や美術ジャンルにおける特性や相互の関連性も明らかにされた。さらに、中世と近代フランスに関わる研究者が参加することによって、15,16世紀北方の問題をより広い視野から、時代の流れの中に置いて考察することが可能になった。 また、研究と平行し、9年度,10年度、11年度にわたって収集してきた相当数の量の写真資料、日本では未刊行の写本、版画などの貴重な作品のスライド、マイクロ・フィルムを、各研究分担者が共有の資料として今後も活用しやすいように整理を行った。
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