研究課題/領域番号 |
09610078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桑野 園子 大阪大学, 人間科学部, 教授 (00030015)
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研究分担者 |
難波 精一郎 宝塚造形芸術大学, 教授 (40029616)
山崎 晃男 大阪大学, 人間科学部, 助手 (40243133)
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キーワード | 継時マスキング / 同時マスキング / 減衰音 / 立ち上がり音 / 重なり感 / 主観的持続時間 |
研究概要 |
聴覚における継時マスキングの研究では、通常、マスクする音とされる音とで異なった音が用いられる。しかし、我々の先行研究および9年度におこなった研究で、単一音内部での継時マスキングの存在が強く示唆された。本研究では、それらを受け、更に異なった角度から単一音内部での継時マスキングの存在とその特性について検討した。F4(349.Hz)、G4(392Hz)、C5(523.3Hz)の3種類の純音を用いて、立ち上がり10ms、立ち下がり590〜830msの刺激(減衰音と呼ぶ)を作成し、2つずつを重畳時間を変化させながら(120〜240ms)継時的に組み合わせた。その後、第2音立ち上がり以前の第1音先行部を系統的に削除し、2音の重なり感の有無と重畳時間および第1音先行部の長さとの関係をみた。その結果、重畳時間が長いほど、重なり感が消失するために多くの第1音先行部を必要とすることが示された。この結果は、重なり感の有無に、異なる音間の同時マスキングだけではなく、同一音内の継時マスキングが影響していることを示唆している。次の実験では、G4の純音を用いて、立ち上がり5ms、立ち下がり45〜595msの減衰音と立ち上がり45〜595ms、立ち下がり5msの刺激(立ち上がり音と呼ぶ)を作成し、立ち上がり立ち下がりともに5msの定常音と比較する形でそれぞれの主観的持続時間を測定した。その結果、立ち上がり音では、定常音と物理的持続時間が同じ時に主観的持続時間もほぼ同じとなったのに対し、減衰音では物理的持続時間の概ね2/3の長さをもつ定常音と主観的持続時間が同じとなった。同一音内の初頭部が強いエネルギーを有する場合にのみ主観的持続時間が短くなるというこの結果は、再び、同一音内での継時マスキングの存在を示唆するものと解釈された。
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