平成9年度に岡山県高梁市に住む65歳以上80歳未満の高齢女性約600人を対象に、社会的ネットワーク(親族関係、近隣関係、友人関係、職場仲間関係など)、ソーシャル・サポート(具体的には、高齢女性は誰からどのような支援を受けられるか)、集団参加、モラール(前向きに生きる意欲)に関する調査を実施した。調査票に記入の不備が多かったので、野邊が平成10年度に調査対象者を訪問し、聞きもらした質問などを聞いた。その際に、調査対象者にライフヒストリーの聞き取りもおこなった。また、平成10年度には標本調査のデータをコンピューターに入力する作業をおこなった。平成11年度にはデータを分析し、社会的ネットワーク、ソーシャル・サポート、集団参加、モラールに影響を及ぼしている要因を追究し、結果を「『高梁市高齢女性のパーソナル・ネットワークと主観的幸福感調査』の基礎分析」という論文にまとめた。次に、野邊は平成11年度にも調査対象者の一部約100人を訪問し、社会的ネットワーク、ソーシャル・サポート、モラールについて詳細な聞き取りをおこなった。また、高梁市役所の職員や同市の民生委員にも聞き取りをおこなった。これらの結果をまとめて、「高梁市の高原部に住む高齢女性の暮らし」という論文を執筆した。 この調査で判明した興味深い発見は、次の点である。高梁市に住む高齢女性の子どもの少なくとも一人は、たいてい、岡山市、倉敷市、総社市といった近くに住んでいるか、高齢女性は子ども夫婦と同居しているということである。別居していても、近くに住む子どもは高齢女性を頻繁に訪問し、家事や農作業を手伝っていた。こうした支援のおかげで、過疎化や高齢化が進んでいる高原部においても、高齢女性は住み続けることができる。
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