高齢化社会における生涯学習の推進とそれを支える社会教育施設の基本的機能とその諸課題を把握することが本研究の基本的テーマである。具体的には、生涯学習の推進にともなう社会教育施設の「インテリジェント化」が地域の中で促進されていく際に、どのような影響が市民の学習活動に及ぼされるのかを把握しながら、社会教育施設の今後の学習社会における位置とその諸課題を実証的に把握することを指向したい。 本研究は2年間にわたる研究として計画されているが、本年度は基本的調査にベースをおいた研究活動を展開した。フィールドとしては福島市に視点を置きデータ・資料・文献等を収集しその分析に着手しつつある。福島市は、市レベルでの生涯学習センターの設置を意欲的に進めており、30万市民の地域にしては複数館の生涯学習センターを建設すると言った全国的にも希有な地域と言える。すでに、そうした文化政策が展開され始め5年以上が経過し、そうした政策の具体的成果・影響等が地域住民の学習活動にあらわれ始めている。福島市では、既存の社会教育施設(公民館等)と生涯学習センターとの関係をいかに整合性をもたせていくかという議論が始まりつつあり、社会教育委員の会議の議題としても設定される今日を迎えている。教育・文化施設の「インテリジェント化」は今後の情報社会に対応し望まれるところではあるが、それが既存の社会教育施設とどのような関係を持って展開され得るのか。基本調査の結果、市民の日常生活の中に一定の役割を持って構成づけられている既存の社会教育施設(公民館等)はまさに小規模ながらも地域館として設置されているところにその有効性の一つが見出され得ると推測されるが、生涯学習センターと言った諸機能が集中する大規模館の新設により、市民の文化活動圏域・学習関係がどのような影響を受けつつあるのか、今後の調査活動の主要な柱の一つである。
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