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1998 年度 実績報告書

近代フランス民衆思想の形成-19世紀パリの労働者を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 09610375
研究機関北海道大学

研究代表者

赤司 道和  北海道大学, 文学部, 教授 (90159319)

キーワード労働者 / パリ / 手工業 / 労働 / 階級 / 社会主義 / 七月王政 / 言説
研究概要

本研究の目的は、19世紀前半フランスの都市の民衆、特にパリの労働者を中心に、その社会意識と社会改革の理念の形成のメカニズムを解明することにある。この点に関してW.H.スーウェルは、七月革命後労働者は、新たな運動を展開するために大革命期の自由主義的言語を取り込むことで、伝統的な職人意識を階級意識へ転化させ、また社会改革の理念としては、生産手段の共有に基づく協同生産という社会主義の定式を採用した、と指摘した(“Artisans,Factory Workers,and the Formation of the French Working Class,1789-1848",William H.Sewell,Jr.)。この指摘を批判的に継承するものとしてここで本研究が問題としたのは、労働者はいかにして共和主義者や社会主義者の受容したか、そのメカニズムである。たとえば労働者新聞L'Artisan紙は「社会の最も多数で有益な階級は、労働者階級である」としている。彼らはサン=シモンの語法に「有益な階級」という表現をつけ加えた。つまり「読み替え」た。なぜ「有益」かを、その労働観に関連させて後の文脈で説明している。民衆は思想家の用語をそのまま受け入れるのではないのである。
基本的史料は労働者の手による小冊子と新聞記事であり、小冊子は10数点を検討した。また労働者新聞L'Artisan紙、LA Ruche Populaire紙とL'Union紙の全記事のタイトルを抽出し、扱われた問題点毎に分類した上で、労働者の政治意識・社会意識に関する論説の訳出を続行している。新聞記事は膨大な量にのぼる。今回は特に労働者の労働観察との関連で、階級意識と社会改革の理念の形成について検討した。今後は労働者独自の労働観、社会観、生活意識との関連で、諸思想潮流の理論の受容と民衆思想の形成についての検討を続けていきたい。

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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