本研究は、第一に英米の言語文化政策が国際的な英語文化の形成に及ぼす役割を明らかにし、第二に英米文化のイデオロギー支配を受けない新しい英語文化の在り方を探る試みとして始まった。研究の初年度にあたる今年度においては、(1)まず英国と米国の言語文化政策がそれぞれの国においてどのように確立し、どのような効果を持ってきたか、次に(2)同じ英語を母国語とする英国と米国において、その政策がどのように異なるか、あるいは共通しているかを調べた。具体的な手順としては、研究代表者(林)が米国の言語政策に関する資料・データ収集を行ない、研究分担者(斎藤)が英国の言語政策に関する資料・データ収集を行ない、それについて平成9年7月に英国ノッティンガム大学においてRonald Carter教授のレヴュ-を受けた。くわしい研究結果については、収集した資料・データの比較検討を待たねばならないが、現在までに収集し得た情報から仮説として考えられることは、英国が、政治・経済的な国力の衰退を補うための自己保全の戦略として、強力な文化資源としての英語を国際語あるいは世界語として対外的に広めようとしているのに対し、米国はその政治・経済力のゆえに対外的な言語政策を必要としない代わりに、黒人英語(イボニックス)やスペイン語を公的にどう位置付けるかといったような、国内における言語政策の確立に苦慮しているということである。平成10年度においては、収集した資料をデータベース化し、具体的な比較検討を行なう計画である。
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