「英語文化の力学と言語文化政策」(斎藤兆史) 英語文化は、基本的に英国による植民地支配と第二次世界大戦後の米国の政治・経済的繁栄によって世界じゅうに広まった。ただし、一口に英語文化といっても、英語の定着状況と使用度、政治・経済状況、民族性の違いによって、その成立の経緯や国や地域ごとに異なっている。さらに、それぞれの国や地域の英語文化そのものが時間の流れとともに変化している。それを全体的に見た場合には、たしかに英語文化は多様化・多元化の方向に向かっている。この文化の行く末は予測不可能だが、日本はその独自の観点からその動きに対して警戒しなければならない。 「言語・文化・歴史ーーナラティブ生成の周辺」(林文代) ポスト構造主義批評の大きな貢献の一つは、サイードやスピヴァックの研究に見られるとおり、我々が主観的事実として疑わなかった言語・文化・歴史記述の裏に潜む虚構性、物語性あるいはイデオロギー性を明らかにしたことにある。この観点から改めて日本における「英語公用語」論を考え直してみると、その是非はともかく、英語を公用語にすることによってアクセスできる(はずの)「世界」の存在が前提となっていたことがわかる。我々はその概念そのものが構築されたナラティヴであることを改めて思い起こし、英語公用語論を考え直すべきであろう。
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