1) これまで10年以上をかけて、中国やインドにおける企業での職務意識調査を行ってきたが、それらと対比する意味で、日本の企業における職務意識調査を、本年度は行った。具体的には、安川電機・高田工業所・ペガサスミシンの3社で100余名を対象としたが、意識には世代間によって大きな差異があることが判明した。 現在、より詳しい統計分析にむけて、データを整理中であるが、これらの分析によりいわゆる「日本的経営」が、意識面においてどの程度浸透しているかが、明らかになるものと思われる。それらはまた、すでに調査済みである中国やインドの合弁企業における職務意識と、どの程度差異があるのかを解明するのにも役立つ。したがっていわゆる「日本的経営」の普遍性に関する試論にも、新たな光を投げかけられうるであろう。 2) 本年度はまた、すでに調査の完了している中国・武漢市の機械工場における職務意識調査の結果を分析した。それらは2つの形でまとめられている。1つは、ホワイトカラーの意識の性格付けを中心に、天津市の場合との比較などをも含め、一橋大学・経済研究所のディスカッションペーパー(A-369)にまとめられている。 もう1つは、、より広く中国経済全般にみられる人々の意識の変化に関する先行研究をサーベイし、我々の武漢・天津での調査との異同を調べたものである。そこでは一般に人々の意識がどのように浸透し、また経済改革との関連で、どうあらねばならないかが論じられている。これは6月日本評論社より刊行される『大国への試練』に収録される予定である。
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