激変する雇用状況のなかで、組織と、そこで働く人たちがどのような関係にあるかを分析するために、おもに関西圏の、いくつかの企業(一部、行政機関を含む)において、組織帰属意識(organizational commitment)のヒアリングとアンケート調査を実施した。 その結果は、いわゆる会社人間としての、帰属意識と価値感について、田尾編「会社人間の研究」(京都大学学術出版会)で示されたような明確な構造を捉えることができず、目下、その構造、及び、それを形づくる因果連関が、急速に変化しつつあることを窺わせるものであった。雇用が安定しているとみられる行政機関に勤務する人たちにおいてさえも、帰属意識にはいくらかの変化をみることができた。 変容については明らかな結果を得られたが、変容過程の因果分析について、まだ十分なデータを得るのは至っていないが、しかし、作業仮説は得ることができた。たとえば、会社という組織の心理的契約関係への関心、または配慮の程度、アウトソーシングの位置づけ、人材育成への長期的な施策の有無、さらに個人的には、それぞれのライフサイクルへの対処などである。 この態度構造の枠組みの変容が、外部的要因、内部的な要因とどのように絡み合っているかは、日本的経営の再検討、さらには、その崩壊さえいわれる今日、慎重にデータ実証を重ねなければならない課題である。
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