雇用構造の変化によって、会社人の帰属意識が大きく揺らいでいる。現状では、ジャーナリスティックに指摘されても、その動揺を学問的に真正面から本格的に捉えた研究は多くない。その心性の変容を的確に捉えた研究は皆無に等しい。 本研究は、社会心理学、組織心理学の知見を動員しながら、いわゆる会社人間の心性と行動について、多面的に、その構造と因果関係を明らかにしようとするものである。とくに、そのなかでも性差と年齢差の会社人間の心性、組織コミットメントに与える影響について調査分析を行い、結果として、若い世代になるほど、組織コミットメントを含むさまざまの要因(モチベーションや内発的動機づけなど)へのスコアの低さが明確にみられ、いわば元気のなさを読みとることができた。さらにいえば、若い世代は、企業へのドライともいうべき関与がみられ、従来から指摘されてきたような、帰属意識の低さをあらためて確信させる結果となった。 これらの結果は、日本的経営を成り立たせてきた基盤が、データ実証的に、若年層から崩れつつあることを強く示唆するもので、強度の帰属意識、あるいは組織コミットメントを前提の経営管理については、再考しなければならないようである。若い世代ほど、すでに終身雇用を考慮の外として行動しはじめているのである。今後、彼らが労働力の中核に位置するほど、従来の経営技法の革新が迫られることになるのは疑いない。 なお集約されたデータは大量であり、今後、さまざまの角度から分析を行い、適時、学術雑誌(たとえば「産業・組織心理学研究」など)に発表する予定である。
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