研究概要 |
結び目,絡み目の位相不変量,特に,Vassiliev不変量についての研究を行なった.まず,3次元空間内の結び目のVassiliev不変量の一般化として4次元空間内の2次元結び目について次のような研究を行なった.2次元リボン結び目は3次元空間への射影の特異点集合が2重曲線だけからなるような2次元結び目である.したがって,1次元結び目に対してVassiliev不変量を定義したような方法で2次元リボン結び目に対してもこのような射影を使うことによってVassiliev不変量を定義することができる.葉広,志摩との共同研究では,正規化したアレキサンダー多項式をテイラー展開して得られる不変量が,ここで定義したVassiliev不変量になることを証明した.さらに,葉広,志摩は,これらの不変量がすべて2次元リボン結び目のVassiliev不変量になることを示した.また,1次元リボン結び目の位数2のVassiliev不変量を調べることにより,位数2のVassiliev不変量について,1次元結び目のときのように回帰的に計算して得られることを示した.これは,高次元結び目のアレキサンダー多項式が回帰的な方法で得られるか,という問題の部分的な解答になっている.(この問題は,高次元結び目に対して,ジョーンズ多項式のようなアレキサンダー多項式以外の新しい不変量の可能性を尋ねる問題に発展する.) また,1次元の結び目や絡み目のVassiliev不変量がなす低い次元の空間について,その基底を調べたが,特にその応用として,HOMFLY多項式のある特殊値を部分絡み目の絡み数を使って表わすことができた.これは,Hosteの公式,および,Lickorish-Millettの公式の両方の一般化となっている.
|