研究概要 |
代表者(加藤)が目的とする研究方向は,3次元空間の有界領域におけるNavier-Stokes方程式に対する初期値問題である。この問題に対して現在までに知られている主な結果は,初速度が十分小さければ無限時間にわたって解の存在が証明されている。初速度に大きさの制限を置かなければ,時間的にlocalな解の存在となる」。この状況のなかで代表者は,10年度において次のことを明かにした。 Navier-Stokes方程式は次のように表されている:(NS)u_t-ν_0Δu+u・▽u=-▽p, div u=0.代表者は,方程式(NS)の解の「時間大域的存在」と「速度勾配」との間に深い関係があることに注目し,次のような新しい方程式を思いついた:方程式(NS)の粘性項-ν_0Δuを,任意のK>0に対し -(ν_0)/2(1+ν(||▽u||^2)Δu, ここで,ν(s)=1/Kmax{s,K} で置き換えた方程式である。言い換えれば,「‘non-Newtonian'を伴うNavier-Stokes方程式」を構想している、この方程式の解を手がかりに,次の成果を得た。 ● 任意に与えられた初速度(大きさの制限はない)からスタートしたNavier-Stokesを満足する解が,その速度勾配が大きくなる時‘blow up'しないで,non-Newtonian方程式を満足するように自然に切り替わって,無限時間にわたって存在し続ける,しかも時間が十分経ったある時点からは,ずっとNavier-Stokes方程式を満足する,そのような解の存在を証明した。 ● 任意のKに対して,速度勾配がKに等しいような初速度関数を見つけて,その初速度に対する「時間大域的強解」の存在を証明した。 この成果について,現在投稿中であり,また韓国の安東大学でのコングレスにおいて講演を行った。
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