研究分担者 |
玉木 大 信州大学, 理学部, 講師 (10252058)
服部 久美子 信州大学, 理学部, 助教授 (80231520)
本田 勝也 信州大学, 理学部, 教授 (50109302)
竹中 茂夫 岡山理科大学, 理学部, 教授 (80022680)
前島 信 慶応義塾大学, 理工学部, 教授 (90051846)
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研究概要 |
(1)井上は高山君(信州大学大学院)との共同研究で非加法的な流入を伴うダムの確率過程に対する一つのモデルを提案した。ダムの確率過程の伝統的な理論において,累積流入量はジャンプ型加法過程により与えられる。特に各時点の放流量が貯水量に比例して変化する場合には,貯水量を記述する確率過程はOrnstein-Uhlenbeck型(OU型)過程となる。この意味でダムの確率過程は加法過程および無限分解可能分布と密接な関係がある。OU型過程は極限分布を持つならば,それは自己分解可能であることが知られている。これに関係して我々は次の問題を提起した:「連続的な流入に対応するダムの貯水量を記述する確率過程が極限分布を持つための条件を決め,また極限分布の特徴付けを与えよ」。我々のモデルにおいてこの流入過程は加法過程ではないので,伝統的なダムの理論を直接的に適用することは難しい。しかし,ダム過程に埋め込まれたマルコフ連鎖を解析することにより,極限分布の存在と収束の状況について部分的な結果を得た。今後の課題としては極限分布の表現とその性質,さらにダム過程そのものの極限分布の性質を解明することが残されている。 (2)今年度は本研究を通じて無限分解可能過程に関する話題をめぐり,国内外の研究者と活発な交流を進めることができた。とりわけ8月には前島・竹中・笠原氏らの協力を得て,研究集会「安定過程とその応用」を開催した。G.Samorodnitsky氏(Cornell大学)は安定過程のLevel crossingについて述べ,Z.Jurek氏(Wroclaw大学)は自己分解可能分布の特徴付けとその中で安定分布が例外的であることを強調した。前島氏は佐藤健一氏(1980)の方法により,半自己分解可能分布の概念を導入した。更に前島・佐藤氏は半自己相似過程の概念を導入し,これが独立増分をもつとき,半自己分解可能分布と対応していることを示した。
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