研究概要 |
本年度は有珠山に加えて,1996年3月5日の小規模水蒸気爆発を契機に火山活動に活発化の兆しがみえる駒ヶ岳も対象として研究を進め,次の結果を得た. (1) 有珠山周辺の温泉井および水井戸の電気検層データから推定された透水層の孔隙率は岩相により変化し,透水層の地質年代による違いは,透水係数ほど明瞭に認められないが,第四系の29〜59%に較べて新第三系では16〜53%と下限値の孔隙率は小さい. (2) マグマと地下水の相互作用による現象の定量解析の試みとして,2次元2相流モデルにより,帯水層と接触した空隙率が一様なマグマの冷却過程を調べたところ,冷却は上部より下部ほど進み,上部の温度低下率が小さいことが分かった.しかし貫入岩体の産状(内部ほど緻密)を考えると,さらに検討が必要とされる. (3) 駒ヶ岳山腹で掘削された坑井で得られた地質柱状などによると,駒ヶ岳山体の浅部には透水層の存在が示唆されたが,深部の透水性は低いと推定された.また,駒ヶ岳の基盤をなす新第三系は山体内でやや隆起していると想定された. (4) 山麓部の坑井資料よると,この地域の温泉貯留層となっている新第三系およびこの下位の先第三系は,透水性は地層の地質年代とともに悪くなる傾向が見られた. (5) 1996年3月および1998年11月の小規模水蒸気爆発では,噴火微動とともに開口を示唆する顕著な傾斜・歪み変化が観測され,これらのデータから水蒸気爆発の発生深度が推定できる可能性のあることが分かった.
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