包接水和物形成過程をin situ山で観測するためにin situ high pressure NMRプロープを設計製作した。包接水和物の場合、固体NMR信号を観測する必要があるのでコイルをソレノイド型(横置)にする必要があり空間的および構造上の制限が多数存在する。試料管は圧力導入管と垂直に位置しているので、特殊成型が可能で100気圧程度まで耐えられるジルコニア製のものを特別に製作し、接続部もその圧力まで問題がない構造にした。また、包接化させる場合、系の温度を精度よくコントロールする必要があるので、プロープ内に小さなバッファタンクを設け温度を一定に保った状態でたえず供給する方式を採用した。圧力系統に関しては20気圧程度までは、問題なく作動することを確認した。 次に、20気圧まで圧力をかけた予備実験として、高分子ポリマーのミクロボアへのXeガスの吸着とメソボアゼオライトへのXeガスの吸着実験を行った。高分子ポリマーに関してはガラス管に密閉した試料での予備実験の結果を再現することができた。in situプロープでは、密閉試料と異なり脱着実験も可能となるが、高分子ポリマーでは脱着が容易に起こらないことが判明した。一方、メソポアゼオライトでは、吸着に伴いポアの内部圧がかなり大きくなる現象を見つけた。これらの結果については、更に詳細に検討中である。 H_2OとXe gasのアモルファス混合物を合成し、これが包接化する過程を常圧下で調べた。X線回折の結果と併せると130Kでアモルファス混合物から立方晶氷が形成し、140K-170Kで包接水和物が生成することがわかった。包接水和物に関しては、数回実験を試みたが、包接化現象は見られなかった。これには、いくつかの原因が考えられる。まず、温度制御系に関しては、包接化にはかなりの温度安定度(0.01℃)が必要であるが、現在得られたプロープでは、そこまで達しなかった。また、Xeガス供給タンクの温度制御も十分でなかった。今後これらの点について断熱剤の変更などの改良を進める予定である。
|