本年度(2年目)には以下の研究成果が得られた。 (1) 対馬を訪問し、ツシマヤマネコ生息地の自然環境を調査した。環境庁対馬野生生物保護センターとの協力体制を整えると共に、同センターの展示室においてヤマネコのDNA分析に関する展示を行い、研究成果を一般に公開した。 (2) 主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ClassIIのDRB遺伝子について、遺伝子増幅法(PCR)によって対立遺伝子の検出を試みた。PCR産物をクローニングし、塩基配列を決定した結果、ツシマヤマネコ集団から複数の対立遺伝子が得られた。予備的解析として、イエネコから得られているDRB対立遺伝子(4グループ)と分子系統学的に比較した結果、ツシマヤマネコのDRB対立遺伝子はグループ1またはグループ2とクラスターを形成したが、グループ3およびグループ4に属する対立遺伝子はこれまでのところ得られていなし。また、ツシマヤマネコに特異的な対立遺伝子も検出された。一方、イリオモテヤマネコおよび大陸産ベンガルヤマネコから得られた対立遺伝子は、グループ1またはグループ2に属するものであった。 技術的な問題点は、PCR産物のクローニングとその塩基配列決定法により得られた塩基配列について、その塩基配列の多型が真の多型なのか、PCRによる人工産物なのか、判定が困難なことである。現在のところ、この問題を解決すべく、詳細な対立遺伝子のタイピングを行っている。
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