研究概要 |
平成9年度については、Si(100)表面に於けるCs及びLiと水素の共吸着について、励起原子脱励起電子分光法(MDS)と昇温脱離分光法(TDS)による研究を行った。なお、本年度の予算で購入した紫外線電子分光法による研究は、本格的な成果を待って来年度に報告する予定である。 1)低温に冷却したSi(100)表面上にCsと水素を吸着させ、その共吸着構造と電子状態について研究し、過去に研究されたNaとKでの結果と比較した。1LM以下でのNa、K,Csの吸着構造はダブルレイヤーモデルで、多層吸着したCs表面は金属的性質を示した。Csと水素の共吸着については、CsHが表面の仕事関数を大きく減少させる物質であることが判明し、基板にCsを吸着させておいた表面を水素に暴露すると仕事関数が減少した。水素終端した表面に1MLのCsを吸着させると、Siのダイグリングボンドを水素が終端しているために基板側の電荷が満たされることによって仕事関数が水素がないときと比較して増加することが分かった。またこのときのCsHは仕事関数を減少させるほどの量が存在していないことも判明した。また、CsHは層状に近い成長様式であることが判明した。 2)1MLの水素で終端したSi(100)表面に1MLのLiを吸着させると予め吸着させた水素の大部分はダンダリング・ボンドから追い出されLiと結合し、リチウム水素を形成する。この傾向は、「あらかじめ重異水素を吸着させておいたSi(100)表面にNaを後から吸着させると、重水素のおよそ半分が脱離し、残りはNaDを形成する。さらに5層のNaを蒸着しても表面には重水素とSiの結合が見られる」ことと、大きく異なる。Liと水素の共吸着がCsやNaと水素の共吸着と異なるのは、Liの吸着位置がCsやNaの吸着位置と異なる事に大きな原因があると考えられる。
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