1) Si(100)2x1表面にあらかじめ重水素を約1ML吸着させて、その上にBaを蒸着する。Baの蒸着量を増やしていくと、重水素は表面から脱離するが、約半分が表面に残る。Baの吸着量が0.5MLを越えるとSi-Dの結合は表面に存在出来なくなり、重水素は全てBaの上にBa-Dの結合として存在する。更にBaの蒸着量を増加させるとそれらはBa層としてその上に堆積し、重水素はさらに表面へは拡散しない。この2層以上のBaの蒸着によりBa-Dの結合はより安定になっている。 2) Si(100)2×1表面のダングリング・ボンドを水素原子で終端することにより、Si-Ba間の相互拡散抑制の可能性を検討した。その結果、終端した水素原子は容易にBaと水素化物を形成しSi-Ba間の相互拡散抑制については効果がない事を示している。 3) Si上に形成された水素化物の仕事関数はBaよりもさらに小さく、数層の水素化物の場合およそ200℃まで安定で、電子エミッターとして有用である事を見出している。しかし本来この水素化物はもっと高温まで安定な物質であるが、Si上では昇温に依りシリサイドが形成される為に水素化物がこの温度で解離してしまう事を見出した。
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