本研究は欧米で蓄積されつつある交通行動のダイナミック分析手法を交通機関の選好意識(以下SPと略す)の分析に適用し、その時間的な変化の構造を明らかにするものである。分析にはこれまで我々の研究室で蓄積してきた広島の新交通システム(1994年8月開業)に対する開業前のSPデータ(1987、88、90、93、94)に今回調査した開業後の行動結果(以下RPと略す)データを加えた6時点のパネルデータを用いる。これによって、SPデータを用いて予測した新交通システム開業後の選択結果を評価し、SPモデルの信頼度、改良点を明らかにする事を目的としている。 今年度は、平成9年度調査したRPデータの単純集計を行い、新交通システムの利用実態を明らかにした。それと5時点のSPデータを各時点毎に比較し、SPデータの精度及び信頼性について検討した。その結果、SPデータを用いて予測したモデルは、過大予測になりがちであることが明らかになり、その修正方法およびパネルデータを用いたモデル構築が重要な研究課題になることが分った。そこで、5時点のパネルデータを用いて多項ロジットモデルを構築し、それぞれのモデルのパラメータの時間的安定性を検討し、パネルデータを用いたSPモデルの有効性を検証した。さらに、状態依存や時差変数を導入してダイナミックモデルを構築し、新交通システム開業後を予測し、その有効性を6時点目のRPデータを用いて明らかにした。
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