この研究に関する最終目標は緑地の微気候を数値的に解析できるモデルを作成することである。そのためには、植栽の熱・水分収支モデルが必要となるが、そのサブモデルとして気孔コンダクタンスのモデル化が必要になる。今回の研究の目的は、気孔コンダクタンスをモデル化することである。モデル化の方法として、気孔の環境条件への応答をニューラルネットワークを用いてモデル化する方法を提案した。以下に研究成果の概要をに示す。 1. 現在までの、気孔コンダクタンスモデルのレビューを行い、各モデルの特徴について調べた。気孔コンダクタンスのモデルは2種類のモデル(現象論的モデルと半実験的モデル)に分類できた。現象論的モデルはさらに3種類のモデル(線形重回帰モデル、Jarvisの変数分離型モデル、そして今回のモデル)に分類できることが分った。 (1) 気孔は環境因子に対して極度に非線形に応答するため、線形重回帰モデルは適用しがたい。 (2) Jarvisのモデルは環境因子間の相互作用が組み込めない。 (3) 半実験的モデルは、現象論的モデルに比べ、光合成モデルを使用するため、より厳密なモデルであるが、現在の研究段階では、葉の水ポテンシャルの気孔への影響を組み込めない。 2. ニューラルネットワークを用いた気孔コンダクタンスのモデルを試みた。従来から使用されているJarvisのモデルとの比較を試み、今回のモデルが精度において優れていることを明らかにした。 3. 本研究でのニューラルネットワークを用いた非線形重回帰モデルが、従来のJarvisのモデルに比べ、精度が向上される原因について調べた。この原因は、Jarvisのモデルでは、気孔コンダクタンスに対する、環境因子間の相互作用を組み込めないことであった。ニューラルネットワークを用いたモデルでは、この環境因子間の相互作用を組み込むことができるため、精度の向上が得られた。 以上の点が、今回の研究で明かとなった。
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