研究概要 |
抽出剤を含んだ固体高分子膜の開発およびその乳酸発酵への応用を目指して研究を行い,本年は以下に示す知見を得た. 1. 高分子膜による有機酸透過に及ぼすアニオン種の影響 前年度までに4級アンモニウム塩を含む高分子膜による乳酸の透過に関する定量化を行ったが,本年度は発酵液中に共有する無機アニオン種の影響を検討した.まず硫酸およびリン酸アニオン単独の膜透過機構を検討し,透過が乳酸と同様の機構で進行していることがわかった.さらに3成分混合系の透過実験を行い,その選択分離の可能性を検討しているところである. 2. 乳酸発酵への高分子膜の応用 4級アンモニウム塩を含む高分子膜を乳酸発酵と組み合わせた装置を作成し,稼働させた.その結果乳酸は濃縮されるものの,4級アンモニウム塩による毒性は完全には除去できず発酵が途中で停止した.そのため以下に示すような新しい乳酸の抽出系の開発を検討した. 3. 有機酸の協同抽出に関する研究 4級アンモニウム塩は発酵至適pH6付近で高い抽出能力を示すが,これまで報告された溶媒和型の乳酸の抽出剤ではpH6ではほとんど乳酸の抽出ができなかった.そこで全く新しい試みとしてこれまでに報告のない乳酸の協同抽出を検討した.種々の系を検討したところ,トリオクリルアミンおよびリン酸トリブチルを用いた協同抽出系を見いだした.さらにこの化学量論関係を明らかにし,抽出平衡定数を求めた.今後この系について更に詳しく検討するほか,乳酸発酵への応用も検討する予定である.
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