研究概要 |
抽出剤を含んだ固体高分子膜の開発,およびその乳酸発酵への応用を目指して研究を行い,本年は以下に示す知見を得た。 1.TOMAC,TOA,TBPによる乳酸の溶媒抽出 TOMACによる乳酸の抽出は1:1錯体形成反応であった。抽出の至適pHは5.5付近で,乳酸発酵の至適pH(=6.0)と近い値であり,発酵液からの乳酸の分離に適していることがわかった。TOA,TBPによる乳酸の抽出も,共に1:1錯体形成反応であった。TOA,TBP共に抽出の至適pHは低pH領域にあり,発酵の至適pHと異なっているため,発酵液からの乳酸の分離試薬として用いる場合には何らかの工夫が必要であることがわかった。TOA-TBP混合抽出剤による乳酸の抽出においては,抽出量に関する協同効果が見られた。 2.抽出剤含有マイクロカプセルによる乳酸の分離 抽出剤と菌体との直接の接触を避ける目的で抽出剤含有マイクロカプセルを調製した。TOMAC含有マイクロカプセルによる乳酸抽出の至適pHは5.5付近であり,TOMAC含有マイクロカプセルは溶媒抽出の場合と同様な性質をもつことがわかった。繰り返し使用の実験より,マイクロカプセルからの抽出剤の漏出がみられた。TOA-TBP含有マイクロカプセルによる乳酸の抽出は,pH依存性について溶媒抽出と同様の傾向を示した。また,マイクロカプセル充填カラムと乳酸発酵を組み合わせた実験より,カラム循環により乳酸は回収され発酵も進行したが,生産性の向上には至らなかった。この点は抽出剤の漏出と併せて今後の検討課題である。
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