ガラス絶縁体の中に原子状あるいは金属クラスター状にナノ分散させた鉛・錫は、古くから装飾用のガラスなどに見られる。このガラスをリチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒中で電極として用いると意外にも容易に還元される。本研究では、デジタルマイクロスコープを用いてこの現象を追跡することによって固体電気化学の新たな研究対象となりうるアニオン(負に帯電したイオン)の固相レドックス反応の存在およびそのレドックス準位の測定を試みた。以下にその結果の要約を述べる。 (1)鉛シリケートガラスは、容易に電解還元を受け、ガラス中の鉛は、Pb^<2+>からPb^0を経由してPb^<3->に相当する電気量まで還元可能であった。また、この過程での鉛シリケートガラスの色調変化、脆性破壊現象の画像の撮影に成功した。更に、脆性破壊時のアコースティックエミッションを検出することにも成功している。なお、この『音』による脆性破壊のモニター手法をAcoustic Emission Histometryと名付け、関連学会に提案した。 (2)鉛と等電子配置である錫のシリケートガラスについても同様な検討を行い、ほぼ同様の結果を得た。 (3)一連の現象を注意深く観察すると、トンネル効果による電子輸送と、巨視的な材料の電気的中性条件の破壊による高電場でのリチウムイオンの挿入、それに伴う応力歪み・材料破壊が見える。しかし、データーとして提示するためには、光学系の改良と、AE法との同時観察が必要であるところから、in-situセルの改良を現在行っている。また、系の誘電率を変化させる目的で、ボレート系のガラスを合成し、その反応の追跡と解明、レドックス準位の測定を引き続いて行っている。なお、初期過程での成果は、電気化学誌に投稿し現在印刷中である。
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