(1)希土類を含有させること可能な硫化物ガラスのうち最も単純な系であるGeS_2ガラスの構造をX線動径分布法とreverse Monte Carlo法を併用して解析を行った。その結果、GeS_2ガラスの構造はα型GeS_2結晶の構造とβ型GeS_2結晶の構造 の中間的構造を有すること、GeS_2ガラスを構成する基本単位であるGeS_4四面体おけるGeのS配位数は4よりも小さくダングリングボンドが存在すること、Ge-S-Ge結合角およびS-Ge-S結合角は大きな分布をもっていること、GeS_4四面体の一部は陵共有をしていることなど原子レベルでの詳細な情報を明らかにした。 (2)Ga_2S_3-GeS_2-La_2S_3系ガラスにEr_2S_3を添加した硫化物ガラスにおけるEr^<3+>イオンの光学的遷移およびアップコンバージョン蛍光を検討した。Judd-Ofelt理論と蛍光寿命データをもとに自然放射確率に基づいてEr^<3+>の分光的性質を検討した結果、このガラスでの自然放射効率は酸化物ガラスやフッ化物ガラスのそれらに比べて非常に大きいことが明らかになった。この理由は主に硫化物ガラスの大きな屈折率によるものであることがわかった。また、このガラスの量子効率は非常に高く、この理由はこのガラスの大きい自然放射確率と低いフォノンエネルギーによるものである。一方、Er^<3+>イオンのアップコンバージョン蛍光の結果を多フォノン緩和およびエネルギー移動に基づいて解析し、アップコンバージョン蛍光の機構を明らかにした。アップコンバージョン蛍光として青、緑および赤の発光を観測した。
|