本年度は、触媒に用いる予定のパラジウム錯体について以下の2項目の研究を行った。 1.パラジウムトリフラートと各種ホスフィン配位子との反応によるカチオン性2価パラジウム錯体の一般的調整法:アセトニトリル中パラジウムトリフラートに各種第三ホスフィンをはたらかせると、ホスフィンが2〜4個配位したカチオン性2価パラジウムトリフラート錯体を高収率で単離することができた。配位するホスフィンの数はリン上のアルキル基によって異なることが分かった。例えば、トリイソプロピルホスフィンの場合には2個、トリフェニルホスフィンでは3個、トリブチルホスフィンでは4個配位した錯体が得られた。これら錯体はアセトニトリル溶液中では、配位子の解離・配位に基づく動的平衡状態にあることも明らかになった。 2.カチオン性2価パラジウムトリフラート錯体の触媒活性:得られたカチオン性2価パラジウムトリフラート錯体を用いて、オレフィンの重合反応における触媒活性を検討した。その結果、従来から知られているBF_4など閉殻アニオンを持ったカチオン性2価パラジウム錯体とは異なり、オレフィンの重合反応の触媒として働かないことが明らかになった。一方、ジエンの重合においても中性2価錯体が触媒となるブタジエンの2量化反応に対し活性がないことも明らかになった。一方、カチオン性2価バラジウムトリフラート錯体はシクロペンタジエンの重合反応の触媒となり、従来のルイス酸触媒などを用いて得られるポリマーとは異なるポリシクロペンタジエンが得られた。
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