研究概要 |
ナシ属野生種10種、ニホンナシ栽培品種30品種における芽の低温要求量を調査した。野生種はおおむね栽培品種より低温要求量が少なく、なかでもチョウセンマメナシ、マメナシは約800Chill unit(以下C.U)と最も低温要求量が少ないという特性を示した。また栽培品種では‘秋栄'、‘豊水'の低温要求量が1200C.Uと最も少なく、‘新水'、‘新雪'のC.Uは約1600と最も多かった。 樹体全体の休眠打破に及ぼす芽と根の役割と相互作用を検討するため、C.U0,700,1500の低温に遭遇した台木(マンシュウマメナシ)に、C.U0,700,1500の穂木(‘二十世紀')を5節に調整して接木した。その後、温室で加温栽培を行い芽の生長、新根及び新梢の乾物重を調査した。全体的に萌芽率は穂木の低温遭遇量の影響が大きかったが、穂木の低温遭遇量が同じ場合には台木の低温遭遇量が多くなるほど高くなり、この傾向は穂木がC.U700の区で顕著であった。新梢乾物重も萌芽率とほぼ同様の傾向を示し、芽の休眠は打破されているC.U1500区でも台木の低温遭遇が不足した区では充足した区と比べ新梢生長が著しく劣った。一方、新根の乾物重は、穂木の低温遭遇と関係無く台木の低温遭遇量に比例して高くなった。 以上の結果からニホンナシの正常な再生長には地下部への低温遭遇も必要であり、またその低温を感知する部位は根にあると判断された。従って人為的に休眠打破を行うには地上部だけでなく地下部にも何らかの低温を代償する処理あるいは低温要求量の少ないマメナシやチョウセンマメナシを台木として用いることが必要と思われる。
|