休眠導入期から露地および温室に置いたニホンナシ‘二十世紀'樹の花芽中のタンパク質を2次元電気泳動法により比較した。低温積算にともない9個のスポット(C〜K)は露地区でのみ増加したため低温誘導性タンパク質と思われた。これらのスポットの内19kDaのタンパク質はCU98からCU414にかけて消え、同時にそのやや塩基性側に新たな19kDaのタンパク質スポットが検出された。さらにCU800とCU1440の時点でもそれぞれ前回の採取時に存在していた19kDaのタンパク質は消失し、新たにそれらの塩基性側に19kDaのタンパク質が出現した。ニホンナシの休眠打破に有効な高温処理前後の花芽中のタンパク質を分析した結果、無処理区に比べ7個のスポットが量的に増大し、2個のスポットが減少した。これらは9個の低温誘導性タンパク質スポットとは一致しなかった。しかし、19kDaのタンパク質は高温処理後に消失し、同時にやや塩基性側に新たなタンパク質が検出された。 マンシュウマメナシ台‘二十世紀'の樹皮および細根のタンパク質を分析した結果、低温誘導性タンパク質は全て樹皮中に存在したが、根にはほとんど検出されなかった。しかし、19kDaのタンパク質は樹皮および根においても検出され、低温積算に伴い芽と同様の変化が生じた。 以上の結果からニホンナシの芽、根とも休眠打破に関連したタンパク質の変化が起こることが示された。今後このタンパク質の機能・特性を詳細に調査する予定である。
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