1.ニホンナシおよびナシ属野生種37種・品種の芽の低温要求量を測定した。供試した野生種の中ではPyrus faurieiが最も低温要求量が低く、P.aromaticaとP.communisは最も高かった。主要ニホンナシ品種の中では'豊水'が最も低温要求量が低く、次いで'幸水'、'二十世紀'の順であった。'新水'と'新雪'はニホンナシ品種の中で最も低温要求量が高かった。 2.'二十世紀'樹を用いて、自発休眠期に根と枝にそれぞれ低温処理を行った。萌芽は枝の低温処理によって引き起こされたが、枝の伸長は枝のみならず、根の低温処理も必要であった。従って、根にも芽の場合のような低温要求が存在すると思われた。またこれらのことは低温の不足する地域での梨栽培には低温要求の少ない台木種を用いることが必要であることを示すものである。 3.'二十世紀'の低温遭遇に伴うタンパク質の変化を2次元電気泳動法により調査した。その結果9つの低温誘導タンパク質が検出され、中でも19-KDaのタンパク質は低温並びに短期間の高温処理によって等電点が変化した。このタンパク質は休眠の深さの生化学的指標になるものと思われる。
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