研究概要 |
高齢巨木林を風致間伐の将来目標の参考とする上で,奈良県吉野,春日山,室生寺のスギ林,群馬県小根山森林公園の各種の森林,長野県赤沢のヒノキ林,上伊那郡のアカマツ林とヒノキ林の森林構造を明らかにすることができた。また,大正時代から継続している伊勢神宮林の森林経営の方針の聞き取りも行った。さらに長野県上伊那郡の中央アルプス山麓の5箇所でアカマツ林,ヒノキ林を中心に人工林の放置状態(放置林),林業目的の森林施業での森林(施業林),風致的目的への森林施業の転換が求められた森林(風致林)の森林の管理方法と目的の異なる林分での様々な林齢の森林構造をそれぞれ分析した。個々の森林構造の分析から間伐による森林育成の可能性を検討し,各林齢段階の間伐による森林育成を時系列的に連続した関係として考察するとともに,その長期的な将来の予測と現存する高齢巨木林を参考とした森林目標との関係を考察した。 以上によりアカマツ林とヒノキ林について各林齢段階と管理状態における間伐による森林育成の可能性を放置林,施業林,風致林の3つの間伐実行と方法の違いを比較し,風致間伐の目的を明確なものとした。風致間伐の目的は,1,放置林に対して森林育成の阻害要因となる過密状態を改善する。2,放置林に施業林も含め現状の林木による高齢巨木林を目標とする。これにより風致目的と経済目的が両立できる経営的条件を確保する。3,永続的に森林が更新するために森林の上層と下層のバランスを考慮し,森林の階層構造と風致目的となる森林の多様性を維持する。4,人々の求める風致は森林構造とその変化に従属する。以上の風致目的による風致間伐の時系列的な方法をアカマツ林とヒノキ林について明らかにした。
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