研究概要 |
鼻腔リンパ腫、とくにpolymorphic reticulosis(PR)の形態をとるリンパ腫はそのほとんどにEpstein-Barr virus(EBV)が潜伏感染していることから、その発症にEBVが強くかかわっていると考えられている。一方,我々はこれまでにこの疾患が東アジア地域で高率に発症していることを見いだした。また,これらの地域においても発症頻度に差がみられ,本邦に比し韓国では5倍頻度が高い。今回は、本邦および韓国の症例について病理疫学的調査を施行し臨床病理学的特徴と発症頻度の経時的変化について検討をおこなった。本邦の症例は1966年から96年に医学部、医科大学附属病院59施設において診断、治療された738例,韓国症例はYonsei大学において1977年から95年に診断治療された102例である。この結果1990年以前と以後では、PRの発症頻度は外来新患者100,000人あたり韓国例では20から10人と減少したのに対し、本邦例では7から6と大きな差を認めなかった。すなわち,韓国の発症頻度は本邦のそれに近づきつつあることが明らかとなった。また両国のPRにおけるEBVの潜伏感染頻度は地域および時期により変化がないことからPR発症にはEBV以外の要因が関与していることを示唆している。 PRは現在、免疫組織学的にNatural Killer(NK)cellのmorkerであるCD56が陽性になること,T cell receptor(TCK)の再構成がみられないことからNK celleの腫瘍である可能性が報告されている。一方、T細胞性リンパ腫との報告もある。これらの報告では症例が少ないこと、組織型が一定していないことがその原因である可能性がある。そこで組織型を一定にしたPR症例21例を収集し、その免疫学的性状、EBV潜伏感染状態、さらにDenaturing gradient gell electrophoresis法によりTCRの再構成の有無について現在検討中である。
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