研究概要 |
【目的】わが国の摂食障害患者の難治化要因、治療、予後に関与する因子を全国六県のアンケート調査から見いだすこと。【対象】全国6県(福岡県、鹿児島県、兵庫県、大分県、新潟県、広島県)の主な摂食障害治療施設を摂食障害,著明なるいそうを主訴に受診した患者。【方法】独自作成した調査票で調査した。診断基準はDSM-IVに準拠したが神経性食欲不振症(以下AN)の体重はBMIが17.6未満とした。期間は平成9年9月15日から12月14日までの3ヶ月間。【結果】鹿児島県と他5県の受診時罹病期間を比較した。全病型では鹿児島県:29.9±44.1ヶ月(81人)、他5県:59.5±62.4ヶ月(206人)でノンパラメトリック検定にて有意差がみられた(p<0.001)。ANの過食・排泄型(以下AN-BP)では鹿児島県:35.1±30.8ヶ月(14人)、他5県:82.4±71.5ヶ月でノンパラメトリック検定にて有意差がみられた(P=0.016)。過食症の過食・排泄型(以下BN-BP)でも鹿児島県:34.2±37.2ヶ月(24人)、他5県:64.0±53.1ヶ月(53人)でノンパラメトリック検定にて有意差がみられた(P=0.016)。全国6県の患者を過食・排泄を行う排泄型群(AN-BP、BN-BP)と非排泄型群(AN-制限型、過食症非排泄型)に分けると排泄型群:64.9±62.6ヶ月(176人)で非排泄型群:29.46±41.1(93人)でノンパラメトリック検定にて有意差がみられた(P<0.001)。【考察】鹿児島県では他5県に比べ一般医にも摂食障害の啓蒙がなされている。患者は比較的早期に当科関連施設に紹介され治療開始までの期間が短く入院後チーム医療による集中的治療が行われている。そのため罹病期間が他5県より短いと思われた。平均罹病期間が短いことから予後も良好と考えられる。早期発見早期治療が必要性が示唆された。近年、家庭内不和、broken familyをもつ摂食障害患者が増えており治療を困難にする因子の一つと考えられる。さらに排泄型が非排泄型に比べ罹病期間が有意に長いこともそのことが関係し予後に影響を及ぼしていると思われる。
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