研究概要 |
【目的】我々は,慢性関節リウマチ(RA)を中心とするリウマチ疾患患者に,カルシウム依存性中性プロテアーゼ(カルパイン)の特異的阻害蛋白であるカルパスタチンに対する自己抗体が高頻度に見いだされることを報告してきた。カルパインはプロテオグリカンの分解や炎症の惹起に関与する中性プロテアーゼの1つと考えられており,その阻害蛋白カルパスタチンに対する自己抗体の産生はRAの病因・病態と関連する可能性がある。本年度の研究では,ヒトカルパスタチンの全長cDNAをクローニングし,その発現産物を利用して,抗カルパスタチン自己抗体の出現頻度およびエピトープ反応性の検討を目的とした。 【方法】既に分離したヒトカルパスタチン部分cDNA(RA-6)をプローブに用い,HeLa細胞およびヒト甲状腺由来cDNAライブラリーよりカルパスタチン全長cDNAの分離に成功した。このcDNAより,PCR法でドメインL,I,II,III,IVをそれぞれコードするcDNAを増殖し,発現ベクター(pEX-2)に組み込んでカルパスタチンドメイン融合蛋白を発現させた。これらの融合蛋白とリウマチ疾患患者血清との反応を免疫ブロット法により検討した。 【結果】患者血清により1つのみのドメインから全ドメインまで,様々なドメイン反応様式が示された。また,RAの81%がいずれか1つ以上のドメインと反応したが,SLEは46%,強皮症は29%,多発性筋炎は38%にとどまった。RAではすべてのドメインについて最も高率に反応したが,特にドメインIに対する反応が49%と高率に認められた。SLEでは全ドメインと均一に反応する傾向があり,強皮症はドメインIとIV,筋炎ではドメインIIIとIVとの反応が主であった。 【結論】RAにおける抗カルパスタチン抗体の陽性率はリウマトイド因子に匹敵し,抗カルパスタチン抗体はRAの新しい診断マーカーとして有用と考えられた。
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