研究概要 |
【目的】慢性関節リウマチ(RA)患者血清中に新たに見いだされたカルシウム依存性中性プロテアーゼ(カルパイン)の阻害蛋白であるカルパスタチン(CS)に対する自己抗体の病因的意義を追求するため,患者抗体のカルパスタチン活性抑制能を検討した. 【方法】既に分離に成功したヒトCS全長cDNAより,5つのドメイン(L,I-IV)をコードする領域をそれぞれPCRで増幅し,発現ベクターpMal-c2に組換え,大腸菌に感染させて発現させたマルトース結合蛋白(MBP)融合蛋白を精製した.家兎骨格筋由来m-カルパインの蛋白分解活性をカゼインを基質として測定し,ここに精製CSドメイン融合蛋白を加え,リウマチ疾患患者IgG(RA 11,SLE 3例)の存在下および非存在下でのカルパイン阻害活性を検討した. 【成績】精製融合蛋白はドメインI〜IVのいずれも用量依存的に家兎カルパインのカゼイン分解活性を抑制した.ここでCSドメイン融合蛋白をあらかじめ抗CS抗体陽性患者IgGと反応させておくと,カルパインの蛋白分解活性が用量依存的に回復した.5mg/mlのIgG濃度では,RA患者IgGの11例中5例(45%)でいずれか1つ以上のCSドメインに対して40%以上のカルパイン活性の回復が認められたが,SLE患者IgGおよび健常人IgGではかかるカルパイン活性の回復は認められなかった. 【結論】抗CS抗体はRAの新しい疾患マーカーとして有用であり,同抗体が関節組織でのカルパイン活性増強を通じてRAの病態形成に関与する可能性が示唆され,RAの新しい治療法の開発の可能性が示唆された.
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