研究概要 |
自己免疫性肝疾患の肝内浸潤リンパ球,末梢血リンパ球のサイトカイン発現プロフィールを解析しいくつかの新たな知見を得た.なお,生検肝組織,末梢血リンパ球採取に際しては,まえもって患者さんに材料の一部を本研究に用いることを説明し,了解を得ている. 1)細胞質内サイトカイン発現解析および末梢血リンパ球サイトカイン産生解析 末梢血リンパ球細胞質内のTh1(IFN-γ),Th2サイトカイン(IL-4)をFACSを用い定量しTh1/Th2プロフィールを解析した.自己免疫性肝炎では疾患活動性とTh1/Th2プロフィールの関連は認めず,同一症例の経時的検討でも活動期と寛解期で特徴的な変化は認めなかった.原発性胆汁性肝硬変では活動期はTh1優位,非活動期はTh2優位であり,UDCA治療有効症例ではTh2シフトを認めた.対照に用いた慢性C型肝炎の活動期症例はTh2シフト,無症候性キャリアー,IFN治療有効例はTh1シフトを認め,自己免疫性肝疾患とウイルス肝炎では病態を規定するTh1/Th2プロフィールが異なることが示された.また全血培養法による末梢血リンパ球のサイトカイン産生の解析でもほぼ同様の結果が得られ,細胞質内サイトカインとサイトカイン産生能は類似していることが示された. 2)定量的RT-PCR法を用いた肝内サイトカイン遺伝子発現解析 末梢血リンパ球を用いた上記の検討結果が,肝内浸潤リンパ球のサイトカイン動態を反映するか検討するため,検討症例の肝生検組織よりRNAを抽出,IFN-γ,IL-4の遺伝子発現量をRT-PCR法により半定量的に解析中である.現在までのところ,肝内,末梢血リンパ球間でサイトカイン発現プロフィールに差を認めていない.
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