放射線療法は悪性疾患に対する局所療法として重要な治療手段であるが、照射部の臓器障害をしばしばきたす。 胸部放射線療法後の間質性肺炎、肺線維症はその代表的疾患である。近年、一酸化窒素(NO)ラジカルが、種々の生体反応を引き起こしていることが明らかとなってきた。我々は、肺組織障害の重要な因子として、肺胞マクロファージ、肺胞上皮、気道上皮から放出されるNOに着目し、放射線照射ラットをモデルとして実験を行った。本症の発症機構が解明されその制御による予防ができればヒトにおいても福音となる。研究結果は以下の通りである。 1 放射線照射ラットの肺胞マクロファージ(AM)はNOを産生する。 2 放射線照射ラットではNO合成酵素(NOS)の発現がAMと肺胞上皮で亢進している。 3 NOSに対する拮抗物質であるN^G-nitro-L-arginin methyl ester (L-NAME)の投与により生体内での放射線肺臓炎の進展が抑制される。 4 L-NAMEは肺におけるプロコラーゲンα1タイプIIIのmRNAの発現を抑制する。 こうした結果は、放射線照射によりAMや肺胞上皮から産生されるNOが放射線肺臓炎の進展に重要な役割を果たしていることを示唆している。ヒトにおける放射線肺臓炎の制御につながるものと期待される。
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