研究概要 |
1.臨床的検討 1996年4月から1998年3月までの2年間に当科を受診した単純性肥満児を対象として脂質系パラメーターと共にantithrombin III,thrombin-antithrombin III complex,von Willebrand factor,tissue plasminogen activator (tPA),plasminogen activator inhibitor 1 (PAI-1),tPA・PAI-1 complex,α_2 plasminogen inhibitor,plasminogen,thrombomodulinを測定した。その結果、PAI-1を除くパラメーターは正常対照群との間に差が認められなかったが、PAI-1は中等度肥満群141±108ng/ml、高度肥満群161±89ng/mlで正常対照群との間に有意の増加が認められた。一方、tPAは対照群とは差が認められなかったものの、中等度肥満群と比べて高度肥満群が有意に高値であった。以上の成績から肥満者はすでに小児期(検査時年齢11.3±2.2歳)から潜在的血栓傾向にあることが示唆された。今後は経過追跡により肥満の進行とこれらのパラメーターの変動を検索してゆく予定である。 2.基礎的検討 血栓症易発症ラットとWister-Kyotoラット(対照)を用い、各年齢群または同一個体の各年齢段階でLPSを投与し、類洞内皮細胞における組織因子mRNAの発現を検討したところ、血栓症易発症ラットで加齢に伴いmRNAの発現が増加する予備的結果が得られ、現在その機序を検討中である。また、血管内皮細胞をアスベスト及び人工鉱物線維に曝露させることにより、ドロンボモジュリンの発現が増加することを明らかにした。
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